欲求

小狼の欲しいものはたくさんある。



李家に頼めば大体のものは手に入るし

時間が解決してくれる。


衣食住に必要なもの

勉学に必要なもの

趣味に必要なもの、在り来たりだ。

彼女を守るために今までより強い魔力も欲しい。

それに見合った知識も。

これらは努力次第というところもあるが

本当に欲しいものはそんなものじゃない。


なかなか手に入らないものはただひとつ。


いや、手に入ったといえば

・・・そうなのかもしれないが


もっと・・・より確実に・・・


(魔力で何とかできたらいいのに)


と、夢のようなことを考えている

星條高校の昼休み。

中学の時のように騒がしい教室や食堂には行かない。

青空に心地よい風が吹くこんな天気が良い日は

外で静かに過ごしたい。

気分転換にもいい。

小狼は木に登り、足を組んだ状態で校庭を見下ろしていた。


(落ち着くな・・・最近忙しかったから)


精神的に参っているのか

人と関わることから避けて

ここにくるのが最近の日課になっていた。


その時

ふと、唯一無二の存在が目に入る。


彼女は別だ。

むしろ関わりたい・・・ずっと隣にいてほしいくらいなのだ。

昼休みはチア部の集まりだと言っていたはずが

何故かここにいる。

心配になって、小狼は木から飛び降りた。


「さくら、どうかしたか?」

「小狼君!」


不安そうな表情を見て

これはなんかあったと思いつく。

特に魔力の気配はないからカード絡みではないとも。

「部活は終わったのか?」

「ううん、抜けてきたの。あのね・・・」

「ああ」

さくらはポツポツと話し始めた。

「次の大会用のユニフォームね・・・あの・・・」

「うん?」

「制服は大丈夫なんだけど・・・

あのね・・・これは隠れないの・・・」

「何が?」

さくらは、顔を真っ赤にして

うつむいて恥ずかしがりながら

自分の制服のネクタイをゆるめはじめる。

「おまっ・・・え、何やって・・・!!」

さくらは、それを露にし首元を指した。

「これっ」

さくらは、胸元まで空いてしまった制服と

手元にもっていたユニフォームとその袋と一緒に

ギュっと両手で抱える。

「知世ちゃんにも千春ちゃんにも相談できなくて

どうしても小狼君にしか・・・

ごめんね、せっかくのお昼休みなのに」


小狼はようやく状況を把握した。


ユニフォームが鎖骨あたりまであいているデザインで

さくらはサイズ確認の際に

それに気づかされたのだろう。

「あ!・・・俺?!」

「・・・ほ、他にいないもん!」

「ご、ごめん!」

昨日、7月13日の誕生日を祝うために

マンションまで来てくれた時のことを

小狼は思い出していた。

さくらがあまりに可愛くて夢中で落としたキス。

見えるところにはつけないでほしいと言われていたから

細心の注意を払っていたのだ。


(制服だったら余裕で・・・)


小狼にとってユニフォームが想定外だったのだ。

「三原に発見されたのか?」

「うん・・・ぶつけたの?って言われたの。

でも、どこにもぶつけてないし

昨日はずっと小狼君のマンションにいたし」

「本当にごめん・・・嫌だったよな」

「嫌じゃないよ!うれしかったもん!!

ただ、思い出しちゃうと

そのあと普通でいられないかも・・・」

さくらも小狼も真っ赤になりながら

「はい、これ!」

「なんだ?絆創膏?」

「鏡ないし見えないから、小狼君が貼ってくれる?」

「ああ」

小狼はそれを確認するために

華奢なさくらの細い肩に手をかけて

さくらの首元へ顔を近づけた。

「・・・っ」

さくらは、小狼の前髪が自分の首筋にあたって

くすぐったくて耐えきれなくなり声をあげそうになった。

小狼の胸を押しながら

「小狼君、お顔がちかい・・・」

「よく見なきゃ貼れないだろ?」

「だって・・・くすぐったいもん・・・」

「じっとしてろ」

さくらはギュッと目を瞑って

肩を震わせながら、絆創膏が貼られるのを待った。


(可愛いな・・・)


小狼は、さくらの恥ずかしがる顔を横目に

それに触れるだけの口づけをする。

さくらはビクッと身体を固くした。

小狼はその様子に気がつき

湧き上がってくる抱きしめたい衝動を押さえつけ

そっと絆創膏を貼った。

「・・・あ、ありがとう」

「どういたしまして」

小狼は、深く溜息をついて

はだけてしまっているさくらの制服を整えてやる。

「今日の放課後は部活ないし

お父さんもお兄ちゃんも帰ってこないの。

よ、よかったらお夕飯一緒にどうかな?」

「大丈夫だ。じゃぁ、放課後に教室で」

「うん!」

さくらが走って部室に戻るのを見送ると

対象がいなくなり安堵したせいか

先程まで押さえつけていた衝動が戻ってきた。


―――ダン!


小狼は、校舎の壁に拳を打ちつけた。


冷静でいなければ・・・

見失わないように・・・


(さくらが欲しい)


この間求めたばかりなのに

またか・・・と小狼は自分にあきれていた。


意のままに手に入らない。


さくらは愛しい存在なのだから。



月と星

カードキャプターさくらの小狼×さくらにハマって しゃおさく中心に小説を書いてます。 自分の満足で好きなように書いてますので 宜しくお願いします。 一応、下手なりに睡眠削って書いてますので 無断転載禁止でお願いいたします~

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