さくらは小狼が髪のカットをどうしているのか

すごく気になっていた。


(術者だからって・・・)


正直、驚きの事実だった。

さくらの家族も美容室に行かないけど

そういった理由ではない。


(今は?

誰かに切ってもらっているの?

まさか・・・自分で??)


さくらの興味は次第に嫉妬へと変わっていく・・・




苺鈴が香港から日本に遊びに来て

さくらの家に泊まることになった。

いつもの友人たちと月峰神社へ行く日

苺鈴がさくらの髪をウエーブになるように巻いてくれる。


(小狼君、どう思うかな?

似合うって言ってくれるかな??

・・・これで髪のお話聞きやすくなるかも)


月峰神社に集まった友人たちは

さくらの髪型をカワイイと言ってくれた。

さくらは単純に嬉しかったが、喜ぶことはなく

セットの仕方がすごいのだと苺鈴を褒めまくる。

さくらは、最愛の人に見て欲しかった。

大勢からのそれより、ただひとりからの言葉。

肝心の彼は、待ち合わせに遅れてくると連絡があり

先にみんなで市を見て待つことになった。

さくらは期待を胸にソワソワしていた。

友達と話をしても、お店で買い物をしても落ち着かず

彼を探してしまっていた。


---あっ!

来た!!


「遅くなってすまない!」


石段を駆け下りてくる音。

さくらはその方向を見上げた。

お互いに魔力の気配を感じ取っていたので

どこにいるかはすぐにわかる。

やっと最愛の人、小狼が来たのだ。

「・・・っ!」

小狼はすぐ目に入ってきたそれに驚き、頬を赤く染めた。

あまりの衝撃に何も声が出せなかった。

な、なんだこの可愛さ・・・!と思っていたが

もちろんそれはさくらには届いていない。

小狼は、手で口を覆って俯いてしまっていた。


(・・・何も言ってくれない)


さくらは少し落ち込み、ため息をついた。

小狼には何か事情があるんだと思い

期待の気持ちを仕舞い込む。

小狼に対する猜疑心が生まれ始めた時

友人たちに動物の耳としっぽが生え始める。

さくらは小狼にそれが生えていないことを確認するとホッとした。

しかし、友人たちから疎外感を感じてしまい

先程から小狼への期待と裏切りという感情が

心で渦を巻いていたさくらは

その心のままに・・・無意識に、別世界の空間を作りだし

小狼をその空間から弾き出した。

「さくら!」

小狼の声は届かず空間は閉じられる。

さくらの心は恐怖の世界を作り上げてしまっていた。

友人たちは動物そのものへと変化していき

山に囲まれたその別世界は落雷のせいで火災が起き

さくらはもうどう収拾すればよいのかわからなくなっていた。


その時


小狼が時間を止め、空間を切り裂いてさくらを追ってきた。

身を削ってさくらを助けに来たのだ。

自身の魔力が尽きるまで、気を失うほどに・・・

さくらは小狼のおかげでミラージュのカードを固着することができた。


(なんかすごく嫌な気持ちだった・・・私、酷い・・・)


さくらの心にはそんな気持ちだけが残った。

今の気持ちを何ともすることができず、さくらはただ

小狼と話がしたかった。

しかし、時間を止めるという高度な魔法を使い

その魔力を取り戻そうと休んでいる小狼は

ずっと頭を垂れたままベンチに座り込んでいた。

さくらが心配そうに彼を見つめると

何かを感じ取ったのか、小狼は顔を上げさくらの方を見た。

目が合ったふたりは、魅かれるようにお互いの方へ歩み寄った。

「少し話せるか?」

「・・・うん」

小狼の体調が悪いからという理由で

みんなより先に2人で帰宅することにした。

歩いている間ずっと沈黙が続いて

さくらは、何か気まずいなぁ・・・と思いながら

小狼の方をチラッと見る。

小狼から公園に寄ってもいいか?と聞かれたので

さくらはコクンと頷いた。

「もう、大丈夫だから。心配させてすまない」 

ふたりは思い出深いブランコに乗る。

今はお互いに、甘い思い出の後押しが必要な状況だった。

「・・・本当に大丈夫?」

「ああ」

「良かった・・・無理しないでね」

「大丈夫、無理してない」

「助けてくれてありがとう」

「いや」

「小狼君・・・あ、あのね」

「なんだ?」

「私ね、小狼君に言ってほしかったことがあって・・・

それを言ってくれなかったから

私、すごく嫌な気持ちになってたの・・・」

「・・・え?」

「だからきっと、ミラージュのカードが・・・」

「何を言ってほしかったんだ?」

「そ、それは・・・言えないっ///」

「何故?」

「私のわがままなの!だから、忘れて!!

小狼君がそんなに疲れてしまったのは

私のせいなの・・・ごめんなさい・・・」

小狼がブランコを降りてさくらの前に立つ。

「俺の魔力が足りないのは、お前のせいじゃない。

俺が未熟なせいだ。

それに、どんなことでも言って欲しい」

小狼はいつでも自分に厳しい。

そして、こうやってさくらを突き放す。

小狼と話ができたことで

少しだけ忘れていたモヤモヤした心がさくらの中に戻ってくる。

さくらは、ブランコに座ったまま

言うつもりがなかった言葉を口に出し始めた。

「・・・どうして?

そうやって私を遠ざける」

「違う」

「いつも小狼君に助けてもらってばっかり・・・」

「そんなことない」

「私も・・・どんなことでも言って欲しいよ・・・

どんなお話でも聞きたい・・・」

「・・・・・・」

さくらは小狼が言えないのはわかっていた。

これ以上、醜い自分を見られているのが嫌になり

この場を離れようとブランコから立ち上がった。

「何も言えない・・・何も話せない・・・

私なんかのために・・・

時間を止めてまで・・・私なんて・・・

わたし・・・私!」

さくらは目を潤ませて、走り去ろうとした時

小狼がさくらの腕をつかみ、自分の方へ引き寄せた。

「きゃ・・・!」

倒れる・・・!と思ったが、さくらは小狼に抱きしめられていた。

突然のことに驚いて目を見開き、涙が頬を伝う。

「しゃ・・・小狼君・・・」

さくらの髪を撫でて、もう一度強く抱きしめた。

不安にさせてしまったのかもしれないと小狼は思った。

「お前が・・・いや、さくらが大切だから。

俺がさくらを守りたいんだ。

遠ざけているわけじゃない」

「うん・・・」

「さくらが好きだから」

「はい・・・」

小狼の一言で心が満たされた。

ああ、これを望んでいたんだと・・・

最近の事件続きでずっと相談していたから

さくらには、安全な場所に居て欲しいと願う小狼の気持ちが

痛いほど届いていた。

理解していたのに、猜疑心が勝ってしまっていたのだ。

小狼は理解してもらえたとその雰囲気に安堵すると

さくらの頬を伝ってた涙にキスをする。

そして、頬を両手で覆って唇を重ねた。

唇が離れると、また抱きしめ合って・・・2人はそれを何度か繰り返した。

「・・・今日は2回目だね」

「何がだ?」

「抱きしめてくれるの」

「・・・!!

い、今なら・・・俺に言いたかったこと、言えるか?」

さくらは小狼に抱きしめられている安心感で

心が開放的になっていることもあり

少し恥ずかしがりながら話した。

「あ、あのね・・・」

「うん?」

「今日、髪・・・少し違って・・・」

「ああ、似合ってる・・・そ、その髪型」

「本当?すごく嬉しいよっ!

小狼君に一番に見てほしかったの・・・」

「そ、そうか。

今日は遅くなってすまなかった」

「ううん・・・小狼君、大好き・・・」

小狼は顔を真っ赤にして視線を逸らすと

さくらは優しく魅力的に彼に微笑んだ。


(やっと聞ける!)


「それでね・・・

小狼君の髪のカットはどうしてるの?」

「えっ?」

「よかったらウチに来ない?」

「は?」





--------------------------------------

クリアカード編第14話の補完・・・

(補完じゃない捏造だな)のお話でした。

書いてて楽しかった♪

テーマは

さくらが小狼と苺鈴の過去に嫉妬

です!!

月と星

カードキャプターさくらの小狼×さくらにハマって しゃおさく中心に小説を書いてます。 自分の満足で好きなように書いてますので 宜しくお願いします。 一応、下手なりに睡眠削って書いてますので 無断転載禁止でお願いいたします~

0コメント

  • 1000 / 1000